天竜浜名湖鉄道には、駅舎や転車台だけでなく、二俣線時代から使われている橋梁も数多く残っています。
その中には、国の登録有形文化財となっている橋梁もあります。
大きな川を渡る長大橋から、知らなければ見落としてしまいそうな小さな橋まで、その姿はさまざまです。
実際に沿線を歩いてみると、それぞれ構造も違えば、製作した会社や使われている鋼材、銘板に残る情報にも違いがあります。
この記事では、これまで実際に訪れて撮影した天竜浜名湖鉄道の国登録有形文化財の橋梁を、掛川側から新所原方向へ向かう順番でまとめます。
各橋梁については個別の記事も作成していますので、気になる橋があれば詳細ページもあわせてご覧ください。
1. 富部橋梁|小さな鉄橋に残る昭和初期の銘板
富部橋梁は、掛川市富部にある天竜浜名湖鉄道の橋梁です。
最寄り駅は桜木駅。
昭和10年の橋梁で、鋼製4連桁、橋長21m。橋台と橋脚を備え、国登録有形文化財となっています。

天竜浜名湖鉄道 富部橋梁
大きな川を一度に渡る橋ではなく、小さな河川をいくつかまたぐように造られた比較的小規模な橋梁です。
規模は小さいものの、鋼製の桁が並ぶ姿にはしっかりとした鉄橋らしさがあります。
製造は汽車製造株式會社。
現地に残る銘板には、製造会社だけでなく、材料ごとの製造元まで記載されていました。
橋そのものは目立ちませんが、昭和初期の鉄道建設の情報が凝縮されたような橋梁です。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260907sakuragi/
2. 原野谷川橋梁|105mの鋼製橋梁
原野谷川橋梁は、静岡県掛川市本郷にある天竜浜名湖鉄道の橋梁です。
1935年の開業当時から使われている橋で、国の登録有形文化財となっています。

天竜浜名湖鉄道 原野谷川橋梁
原野谷川に架かる橋長105mの鋼製橋梁です。
昭和9年に、日本橋梁株式会社によって支間12m90、2連の鈑桁が製作されています。
さらに、支間19m20、4連の鈑桁には八幡製鉄の材料が使われ、株式会社横河橋梁によって昭和9年に製作されたことが分かっています。
ひとつの橋梁の中に、異なる支間や製作会社の桁が組み合わされているのも特徴です。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260712-1/
3. 太田川橋梁|緩やかな曲線を描く192mの橋
太田川橋梁は1935年製で、国登録有形文化財となっています。
橋長は192m。
河川部に架かる上路鈑桁と、道路上に架かる下路鈑桁1連から構成されており、橋梁全体が緩やかな曲線を描いているのが特徴です。

天竜浜名湖鉄道 戸綿駅 ホームより太田川橋梁方面
河川部の上路鈑桁は、日本橋梁株式会社によって昭和9年に製作されました。
一方、道路上の下路鈑桁は、川崎車両橋梁株式会社が昭和8年に製作しています。
全体を遠くから見るだけでなく、桁ごとの構造の違いにも注目したい橋梁です。
▶ 詳細記事
https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260709-2/
2026年9月 天浜線・太田川橋梁|森町に残る国登録有形文化財の鋼製12連桁橋
4. 一宮川橋梁|鋼製桁とコンクリート桁がひとつの橋に
一宮川橋梁は、袋井市川会で一宮川を渡る天竜浜名湖鉄道の橋梁です。
橋長は約40m。
鋼製単桁とコンクリート造2連桁から構成されており、ひとつの橋梁の中で異なる構造を見ることができます。

天竜浜名湖鉄道 一宮川橋梁
規模としてはそれほど大きくありませんが、近くから見ると鋼製部分のリベット構造がよく分かり、昭和初期の鉄道橋らしい存在感があります。
製造会社については、今回確認できていません。
周囲には水田や丘が広がり、一宮川も比較的自然な姿が残っているため、橋そのものだけでなく周辺の風景と一緒に撮影しやすい場所です。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260826ichinomiyagawa/
5. 二俣川橋梁|緩やかにカーブする58mの橋梁
二俣川橋梁は、天竜二俣駅の西約500m、二俣本町駅のやや東側にある二俣川に架かる橋梁です。
橋長は58m。
両端部にコンクリート造単桁橋梁を配置し、中央部には鋼製2連桁橋が使われています。

天竜浜名湖鉄道 二俣川橋梁
橋梁全体は緩やかにカーブしています。
鋼材には八幡製鉄所のものが使用され、日本橋梁株式会社が製作したことが確認されています。
直線ではなく、曲線を描く線路と橋梁の組み合わせも、この橋の特徴です。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260729futamatahonmachi/

6. 天竜川橋梁|天浜線最長403mの橋梁
天竜川橋梁は、天浜線の中でも特に存在感の大きな橋梁です。
橋長は403m。
天竜浜名湖鉄道の橋梁としては最長で、国登録有形文化財となっています。

天竜浜名湖鉄道 天竜川橋梁
二俣本町駅から約1km南西、天竜川に南北方向へ架かっています。
北側には支間62m40の3連トラス橋。
南側には支間31m50の上路鈑桁6連と、22m30の上路鈑桁が接続されています。
橋台と橋脚はいずれも鉄筋コンクリート製です。
また、西側には国道362号の鹿島橋が並走しています。
長大な天竜川と鉄道橋、道路橋が並ぶ景観は、天浜線沿線でも特にスケールの大きな場所です。
天竜浜名湖鉄道の橋梁の中で、唯一トラス橋形式を採用している点も特徴です。
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7. 都田川橋梁|高さのある123mの鋼製橋梁
都田川橋梁は、昭和15年、1940年に建設された全長123mの橋梁です。
国登録有形文化財となっています。
特徴的なのは、水中に立つ2本の橋脚。

天竜浜名湖鉄道 都田川橋梁
ほかの橋脚とは形が異なり、底部が円形で、脚部も円柱状となっています。
低水位ラインから線路面までは14m20あり、現地で見るとかなりの高さがあります。
2連の製作プレートはいずれも昭和13年。
八幡製鉄所の鋼材が使われていますが、製作会社はそれぞれ異なります。
1連は川崎車輌株式会社。
もう1連は日本橋梁株式会社の製作です。
同じ橋梁の中で異なる会社が製作した桁が使われている点も興味深いところです。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260731_fruit/
8. 瀬戸山橋梁|地形に溶け込む小さな3連アーチ
瀬戸山橋梁は、コンクリート製の3連アーチが特徴の小さな橋梁です。
場所は天浜線の常葉大学前駅〜金指駅間。
国道362号から確認することができます。
ただし非常に小規模で、橋そのものも周囲の地形に溶け込んでいます。

天竜浜名湖鉄道 瀬戸山橋梁
事前に場所を知らなければ、鉄道橋だと気付かず通り過ぎてしまいそうなほどです。
現地では、目立つ位置に銘板など橋梁の情報を示すものは確認できませんでした。
大きな川を渡る橋ではなく、都田川沿いの地形の中に線路を通すために設けられた橋梁と思われます。
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https://tabimap.yamaneko-blog.com/20260902setokyouryou/
9. 瀬戸橋梁|銘板に残る設計者の名前
瀬戸橋梁は、瀬戸山橋梁と同じく、常葉大学前駅〜金指駅間にある国登録有形文化財の橋梁です。
全長は約39m。
鉄筋コンクリート造で、瀬戸山橋梁より規模の大きな橋です。

天竜浜名湖鉄道 瀬戸橋梁
こちらも国道362号側から見ることができます。
瀬戸橋梁で特に印象的なのが、橋に残された銘板です。
ひとつには、
「昭和十三年七月竣工」
「瀬戸橋梁」
「鐡道省」
と記されています。
もうひとつには、
「架設 熱海建設事務所」
「溶接 名鉄・浜松工場」
「設計 河野技師」
と読める文字があります。
天浜線の橋梁に残る銘板をいくつか見てきましたが、設計者と思われる技師の名前まで刻まれたものは珍しく感じました。
橋梁そのものだけでなく、建設に関わった人や組織まで記録として残っている点が、この橋の大きな特徴です。
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橋梁を歩いて見ると、天浜線の違った姿が見えてくる
今回紹介した橋梁は、すべて天竜浜名湖鉄道で現在も使われている国登録有形文化財です。
ただし、その姿はかなり違います。
橋長21mの小さな富部橋梁。
100mを超える原野谷川橋梁や太田川橋梁。
403mという圧倒的な長さを持つ天竜川橋梁。
3連アーチの小さな瀬戸山橋梁。
銘板に設計者の名前まで残る瀬戸橋梁。
同じ二俣線・天浜線のために造られた橋でも、川や地形、建設された場所によって構造は大きく変わります。
また、実際に現地へ行くと、橋梁そのものだけでなく、銘板やリベット、橋脚、周辺の川や農地など、写真で残しておきたいものが数多くあります。
特に小さな橋梁は、有名な撮影地になることも少なく、記録している人も多くないかもしれません。
それでも長い年月、列車を支え続けています。
天浜線を駅から駅へ歩いていくと、駅舎や列車だけでは見えてこなかった鉄道の姿が少しずつ見えてきます。
今後も沿線を歩きながら、橋梁や踏切、旧線跡など、天浜線を形作っている小さな構造物を記録していきたいと思います。




